- ---『夢のように、おりてくるもの』 第三部「視界樹の枝先を揺らす」7-----
そしてふと気づいた。視界の静寂の兆しを。風はあった。葉のそよぎも。だがそれらが撓むようにして凝り静止した。背後にあるはずの幾つもの靴音、話し声、そうしたものどもをたぐりよせようと抵抗したが無駄だった。
きみはわたしを恐れなかった。わたしがひとを殺すことをなんとも思っていないのに。
頤をあげてまっすぐにこちらをみていた。
己は知っていた。そして恐れた。正直にそう口にしたとたん、あの男はわらった。
まあいい。べつにそんなはなしをしたいわけじゃな…[全文を見る]