「HERO」
バス停のベンチに女の人が座っていた。何台もバスがやってきたが、その人は座ったままだった。ボクは気づいた。彼女は泣いている。
とたんにボクは彼女を助けてあげなければと思った。
今彼女の悲しみを知っているのは、世界中でボク一人だけ。
今彼女が必要なものを与えられるのは、世界中でボク一人だけ。
そして、今のボクならそれができる。
大人のくせに街中で泣くなんて思わなかった。涙がぼろぼろこぼれて止められない。鳴き声を漏らさないように口を閉じているのに精一杯で、立ち上がって歩くことさえできない。ただ誰にも気づかれないように下を向…[全文を見る]
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ハロウィン超短編まつり(>w<)2010のことを語る
ハロウィン超短編まつり(>w<)2010のことを語る
「訪問者」
「今日はお昼前にかわいいお客さんが来ますよ。」
朝の健康チェックに来た看護士が帰り際に言う。
「1階の保育園の子供たちがハロウィンの仮装して訪ねてくるんです。お菓子をあげてくださいね。」
老人ホーム、通所介護施設に保育園が同居するこの建物は、こうした催し物が多い。老女は手すりにつかまって玄関まで看護士を送るとテーブルに戻り、おなかがカゴになった折り鶴にお菓子を詰めはじめた。
弱々しいノックが聴こえた。玄関に10歳くらいの痩せた男の子が立っている。開襟シャツも半ズボンもすり切れて、片足だけ履いた下駄は泥だらけだ。老女は…[全文を見る]