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もしわたしが、マシュウが欲しがっていた男の子だったら、今頃は大いに役立って、いろんな面で楽をさせてあげられたのにねぇ....
そう思うと、男の子だったら良かったのにって、どうしても思っちゃうの。

そうさのぅ、わしゃあなぁアン、1ダースの男の子よりもおまえにいてもらう方がいいよ。
いいかい?1ダースの男の子よりもだよ。
そうさのぅ、エイブリー奨学金を取ったのは男の子じゃなかったろ? 
女の子さ、わしの女の子だよ。わしの自慢の女の子じゃないか。アンはわしの娘じゃ。

"Well now, I'd rather have you than a dozen boys, Anne,"
said Matthew patting her hand.
" Just remember that ― rather than a dozen boys. Well now,
I guess it wasn't a boy that took the Avery scholarship, was it?
it was a girl ― my girl ― my girl that I'm proud of."
(『赤毛のアン』)

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※「はだしのゲン」閲覧制限要請の前教育長インタビュー(東京新聞8月24日)

―閲覧制限問題の発端を教えてください。
 昨年四~五月、市内の男性が、作中の日本兵の残虐行為の描写を「事実ではない」として、学校図書館からの撤去を市教委に繰り返し求めてきた。やりとりを録画されインターネットで公開されだが担当課が「撤去は指示しない」と突っぱねた。
 同八月、同じ男性が市議会に撤去を求める陳情を提出し、市議会が取り上げた。そこで市教委でも全十巻を入手し読んだ。
―作品にどの様な印象を持ちましたか。
 原爆の悲惨さを伝える作品と評価するが、後半を初め…[全文を見る]

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 先に私は、七十歳を越えて、心身ともに軽やかな風に吹かれているような気がする、と書いた。
 その理由を考えてみると、要するに「無責任」の年齢にはいった、ということらしい。
 この世は半永久的につづくが、そのなりゆきについて、あと数年の生命しかない人間が、さかしら口に何かいう資格も権威も必要も効果もない。
 人間このよを去るにあたって、たいていの人が多少とも気にかけるのは遺族の生活のことだろうが、そんな心配は無用のことだ。子孫は子孫でそれなりに生きてゆくし、また七十を過ぎた人間に、死後の子孫の生活の責任までおしつける人間はいないはずだ。
 生きているときでさえ、万事思うようにはゆかぬこの世が死後にどうなるものではない。
 七十歳を越えれば責任ある言動をすることはかえって有害無益だ。
 かくて身辺、軽い風が吹く。
(『あと千回の晩飯』山田風太郎)

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86年のイギリス、カナダ合作“Murder by the book”は、クリスティー宅に編集者が訪れて『カーテン』の出版を要請していると、ポアロが現れ、「まだ起きていない犯罪の被害者と犯人を知っているが、その時期と動機がわからない。被害者は自分で、犯人はあなただ」と言う番外編的作品。51分の中編で、監督はローレンス・ゴードン・クラーク。ペギーアシュクロフトがクリスティー、イアン・ホルムがポアロを演じている。

(p.156『映画で読むアガサ・クリスティー』)

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くらしのことなら、戸倉先生は、もうずいぶんためこんだものねえ。たとえ先生が亡くなっても、あと奥さんとあなたがくらしてゆくのに、なんの不足もないわ。……だいたいあの先生の評論に、このごろ庶民庶民ということばがずいぶん多くなったわねえ。作家や評論家のかくものなかに、庶民とか大衆とかいう言葉がいやにふえてきたら、きっとそのくらしが庶民とかけはなれて豪勢なものになってきた証拠だとみていいようだわね
(山田風太郎『殺人喜劇MW』より)

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Angelo: Dici che nel resto del mondo non hanno problemi?
(アンジェロ:じゃあ世界の他の国には問題がないっていうのかい?)
Chiara: Beh, è chiaro che tutti abbiamo dei problemi. È nolmale. Farne un film o scriverne un libro è un tentativo di risolvere o, per lo meno, di capire il problema.
(キアーラ:だから、どこだって問題くらいあるわ。普通じゃない。それについて映画を撮ったり本を書くのは問題を解決しようとするか、できなくてもせめて理解しようとする試みなわけ。)
Carlo: E se riesci a farlo con ironia ne…[全文を見る]

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本格ミステリには「ヴァン・ダインの二十則」や「ノックスの十戒」など伝説的な禁則(それらが実際の権威をもった時代はないのだが)があり、作家にストイシズムを要求する。それをもって、なんと窮屈で非文学的なのだろう、と嗤うのは間違っている。数多の名作が禁を破ることによって名作の地位を得ているし、そもそもルールを美しく裏切ることは本格ミステリの最高の栄誉なのだから。様式美や厳格げなルールは本格ミステリの外面であって、おそらく本質ではない。では、何が重要かと言えば――すべてを裏返せ、ずらし続けろ、自由であれ、ということなのだろう。
(有栖川有栖)

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語りは作家にも読者にも方向性を与えてくれる。一部のセルビア人が自国の行動を正当化するために語った物語のように――あるいはわたしたちが自分の行動を正当化するために語る物語のように。ただし自意識の基盤としてよく過大評価されるライフストーリーは、あまりに窮屈な自画像のなかにわたしたちを閉じ込めてしまう可能性もある。心理セラピーの目標の一つは、人々に自分の人生の筋道を通させることではなく、むしろ筋道へのこだわりを減らすこと――語りの鎖のいくつかを断ち切って、もっと予想外の創造的な行動がとれるようにすることである。
(pp.281-282『書きたがる脳』)

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典型的なウェルニッケ失語症患者のおしゃべりは次のようなものだ。
(中略)
こういうおしゃべりは、よく耳を傾けないとまともかと思ってしまうので、政治家のトークと呼ばれることがある。
(『書きたがる脳 言語と創造性の科学』pp.62)

噴いた。

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「犬を愛する人にとっては、いかに犬が愛すべき動物であるかということについて百千の理屈が成り立つ。犬のきらいな人間にとっては、いかに犬がうるさい動物であるかということについて百千の理屈が成り立つ。このあいだの断層は、永遠に埋められやしない」
「刑務所に入っている人間のうち、じぶんがほんとうに悪い人間だと考えとる奴が何人あるだろう。いつ社会の罠におちるかもしれない、という現代人の恐怖を描いた小説がこのごろ流行っているらしいが、いつわれわれは加害者に陥るかもしれない」
「人間の真実は、むしろ曳かれ者の小唄の中にある」
(『夜よりほかに聴くものもなし』山田風太郎)

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※長~いよ
※ネタバレ注意(『パーム26 愛でなく』)

この会議の参加者の方々は色々な意味で環境問題の最前線におられます
ある組織的行動は大規模に環境を破壊し 大勢の直接的被害者を生む
そしてある組織的行動は 環境の保全を推進する
皆さんはこの三者のどれかあるいは複数に属する方々だ
しかし環境に作用する最も大きな力は こういった直接的なものでなく 間接的な力です
わたしはその 最大勢力の中から たまたまこの場にやってきました
わたしは誰か? その最大勢力とは何か?
大企業の人間でも 政治家でも 環境団体の人間でもない ごく普通の人間です
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カースルは驚きの目で、いとも自然に状況に順応するミュラーの言動を見守っていた。それはカメレオンが環境に合わせて体色を変化させるのに似ていた。おそらく、週末をレソトのカジノに遊ぶときも、このような順応性を発揮しているのだろう。カースルはそのことだけで、彼への反感が烈しくなった。食事のあいだも、ミュラーはそつのない会話をつづけた。おれはむしろ、ヴァン・ドンク大佐のほうに好感を持つ、とカースルは思った。ヴァン・ドンク大佐だったら、サラと顔を合わせた瞬間に、何もいわずにこの家をとび出していったであろう。偏見には理想と共通する何かがある。コーネリアス・ミュラーは偏見を持つことがなく、それだけにまた、理想がなかった。
(グレアム・グリーン『ヒューマン・ファクター』p.124)

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自分で自分の身体をかきむしるのが、最高の激昂の姿である。これは自分で自分の不幸をえらびとることに他ならない。自分で自分に復讐することに他ならない。子供が最初このやり方をやってみる。自分が泣くことに腹を立ててなおさら泣く。腹が立っていることに苛立って、自分をなだめまいと決心することによって自分で自分をなだめる。それがつまりすねることである。自分の好きな人を苦しめることによって二重に自分に罰を与える。自分をこらしめるために自分が愛している人をこらしめる。知らないことを恥じて、もう決して読むまいと誓う。強情を張ることに強情を張る。憤…[全文を見る]

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実のところ、おれは言いすぎたのだ。彼は蒼白になり、打ちのめされ、いまにも気を失いそうだった。おれは思った、『言ったって何になる? この男はいつも無邪気なのだ。無邪気な者に批難することはできない、彼等はつねに罪がないのだ。押えつけるか、消してしまうか、それより手がない。無邪気は狂気の一種なのだ』
 彼が言った、「テエがこんなことをするはずはない。ぼkは確かにそう思う。誰かがテエを欺したんだ。コミュニストが……」
 彼は自分の善意と無知とで、絶対堅固に武装していた。
(p.187、『おとなしいアメリカ人 グレアム・グリーン全集14』)

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時はしばしば復讐する。が、復讐はしばしば後味のわるいものだ。いっそわれわれはみな他人を理解しようとつとめないほうがいいのではないか、人間というものは一般に、妻は夫を、恋人はその情人を、そして親は子供を、決して理解することがないという事実を承認して、他人を理解しようとすることをやめてしまったほうがいいのではあるまいか? おそらく、だからこそ人間は神を発明したーー理解する能力のある存在を。おそらく、もしおれが理解されたがったり、理解したがったりしたら、きっとおれは進んで信仰に迷いこんだことだろう、けれどもおれは報道記者(リポーター)だ。神は、もっぱら論説記者のためにのみ存在するのだ。
(p.66、『おとなしいアメリカ人 グレアム・グリーン全集14』早川書房)

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「そりゃそうです。誰だってひとさまに胸を張れないところを持ってます。(……)さんだって確かに嫌なひとだったのかもしれない。偏差値的な優等性を必要以上に誇ったりするのは確かに愚かしいことでしょう。場合によっては顰蹙を買ってもおかしくない。だけど他人が見たら馬鹿らしいことだって、そのひとにとってはかけがえのない拠り所かもしれないじゃないですか。自分の存在を立脚させ得ることだからこそ、ひとは時として必要以上に己れの長所を誇示してしまうわけじゃないですか。他人には見苦しく映る。その通りです。それを本人が気づかず増長するのだって不愉快極ま…[全文を見る]

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「俺はよく、人間の耐えられる苦しみの量というのはどれぐらいなんだろうと考えたもんだ。人間の忍耐の限界というのはどこらへんにあるんだ? こんなにみじめでけがらわしい生活だっていうのに、一体どこまで苦しんだら人間は執着が消えるんだ? こんなふうに自分で自分に聞いては、俺はこのすさまじい悲惨に俺たちを耐えさせている不思議な力の正体を知りたいと思って長い間考えこんだ。他の場合だったらこの生活のほんのひとかけらでもとても“耐えられない”と思ったに違いないんだ。
 この不思議が心理学なんかで説明できるとは思わないが、俺は自分のうちにおこったこ…[全文を見る]

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 休息、休息と富というのか__そういうもののありがたさが分るのは不惑を過ぎてからだな。しかもだ、不惑のあとに、人生が半分残っとる。思うだに胸キュンじゃ。きみ、若いひとはそのことを肝に銘じとかなきゃいかん、そうすりゃ人生最悪のミスはたいてい避けられる。二十歳の人間がみんな、人生の半分は不惑を過ぎてからだちゅうことを自覚してくれればだな……。 (p.191、イーヴリン・ウォー著『大転落』)

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 ポイントは、心的外傷ではなく、物語。大きな物語ではなく、自分の傷にまつわる小さな物語が、特定のヒトやモノやコトとのつながりを感じさせ、私たちをささえてくれる。トラウマにかぎらず、物語は、小さな幸せの技術なのだ。
(中略)
 人生の重荷にうんざりし、単純なことを夢見るようになったとき、ほしくてたまらなくなる人生の法則がある。物語の秩序という法則だ。圧倒的に複雑な自分の人生を、「これが起きた後に、あれが起きた」という単純な物語の意図に通して再生すれば、心が落ち着く。「おれは家の主人だ」と感じさせてくれる何かが、無意識のうちに生まれ…[全文を見る]

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 悪習に染まっていたわけではない。実行するときには、始めることにたいする抵抗感と、まねくかもしれない結果にたいする不安で、いつもいっぱいだった。想像だけが不健康な方向にもっていかれていた。1週間のうち毎日がしだいに鉛のようにテルレスに重たくのしかかってくると、からだを腐食するような刺激がテルレスの気持ちをそそりはじめた。ボジェナを訪ねた記憶から独特の誘惑が生まれた。ボジェナはとんでもないほど下品な人間に思われた。ボジェナとの関係、そのときテルレスが味わった感情は、自己犠牲の残酷な儀式のように思われた。テルレスは刺激された。なに…[全文を見る]