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のことを語る

草原の輝き 花の栄光
再びそれらは還らずとも
なげくことなかれ
その奥に秘めたる力を
見出すべし

ワーズ・ワース

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のことを語る

ベートーベン 谷川俊太郎

ちびだつた
金はなかつた
かつこわるかつた
つんぼになつた
女にふられた
かつこわるかつた
遺書を書いた
死ななかつた
かつこわるかつた
さんざんだつた
ひどいもんだつた
なんともかつこわるい運命だつた

かつこよすぎるカラヤン

(谷川俊太郎詩集1 角川文庫 300ページ)

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のことを語る

光の帯をまのあたりにして
立ちすくむだけの日々だった
強がりで
本当は淋しかったのに
ひと言もそう言えずに
いつも笑い顔で別れた

海の波のひとつひとつ
波の音のひとつひとつ
まぶしかった瞬間のひとつひとつ
間違った瞬間のひとつひとつ
正しかった瞬間のひとつひとつ
あの人のすべて

               銀色夏生

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のことを語る

伊丹十三に先立たれて芸能活動を休止していた宮本信子が、復帰会見に際して朗読した詩です。

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のことを語る

涙をぬぐつて働こう / 三好 達治

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のことを語る

涙をぬぐつて働こう 
         丙戌歳首に
 
 みんなで希望をとりもどして涙をぬぐつて働かう
 忘れがたい悲しみは忘れがたいままにしておかう
 苦しい心は苦しいままに
 けれどもその心を今日は一たび寛がう
 みんなで希望をとりもどして涙をぬぐつて働かう
 
 最も悪い運命の颱風の眼はすぎ去つた
 最も悪い熱病の時はすぎ去つた
 すべての悪い時は今日はもう彼方に去つた
 楽しい春の日はなほ地平に遠く
 冬の日は暗い谷間をうなだれて歩みつづける
 今日はまだわれらの暦は快適の季節に遠く
 小鳥の歌は氷のかげに沈黙し
 田野も霜にうち枯れ…[全文を見る]

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のことを語る

「命は」 吉野弘
 
生命は
自分自身で完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命はすべて
そのなかに欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思えることさも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?
花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光りをまとって飛んできている
私も あるとき
誰かのための虻だったろう
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない