夏を駆け下りる夜、優雅なふりでゆれる百日紅の花、そこに孤独が隠れていることを知っている。
お話しするにはログインしてください。
一行超短編のことを語る
一行超短編のことを語る
初めて感じた幸せを無くさないように大事に大事にしまい込んで、どこにしまったのか忘れたままその家を出た。
一行超短編のことを語る
じいさんは今日も釣れない釣堀で、桃を食っていた。
一行超短編のことを語る
子供たちは星捕り網を掲げて、夜の公園へと散らばっていった。
一行超短編のことを語る
脱衣所ほど、家にいる安心感を得られる場所はない。
一行超短編のことを語る
お風呂に行っておいで、という呼びかけが母から妹に変わり、母の呆れ声に変わり、自分の脳内からになり夫になり夫の友人の電話魔からになる。
一行超短編のことを語る
奥歯に詰まったカチカチのごはん粒を口につっこんだ人差し指でがりがり掻き出せるほどに、一人。
一行超短編のことを語る
オスは肋骨が1本少なくメスは完全に揃っている、というホモ・サピエンスの亜種は、B.C.からA.D.に切り替わるあたりで絶滅したという。
一行超短編のことを語る
心躍る自分を忌々しく思いながら、風呂上りの爪に紅を刷く。
一行超短編のことを語る
あんな安っぽいコロンをつけて、あれほど甘い匂いになる人を僕は他に知らない。
一行超短編のことを語る
歩いても、走っても、君の道だ。
一行超短編のことを語る
冷たく固い肌触りのシーツの上で、水を薄めたような沈黙を呑みながら、訪れる気配のない眠りを待つ。
一行超短編のことを語る
なるほど。一文イズノット一行。ご指摘ありがとうございます。すいません、勘違いしていました。
ちなみに、ぼくのインチキな連想は、多分ボルヘスかマルケスのどちらか(忘れた)から来てると思われます。
一行超短編のことを語る
意地悪で、豚の脂身が好きな給士のマカール・ジェーヴシキンが、いつものようにレストランへ出勤すると、分かれてから一週間になるアンジェリーナ(ウエイトレス)と親友のラルフ(料理人見習い)から「オレたち、付き合ってもいいかな?」と問いただされ、思わず「構わない」と言ったものの、三年後、あの日から俺の人生は坂を転がり落ちるように悪くなっていったんだとマカールは思ったり、思ってみなかったりしながら一人で風呂につかりながら、スタンダールの『恋愛論』を読んでいる。
一行超短編のことを語る
元羊飼いパンチョは、セルバンテスの頼れる相棒であり、親友であったが、今まで一度も女を抱いたことがなかった(童貞)。
一行超短編のことを語る
旅の途中、ある日セルバンテス(ロバで放浪中のアルゼンチン人)が目覚めると、脇の下や股の間などじめじめしたところを好み、蝶が卵を産み付けたように「かなしみ」がびっしりとこびりついており、ひどいニオイを放っていることに気がついた。
一行超短編のことを語る
考えまい考えまい、と、ずっと考えている。
一行超短編のことを語る
どこかわからないけど、どこか遠くへ行きたい、と思いながら、インスタントコーヒーの封を切る。
一行超短編のことを語る
「たいちょうが悪いんです」上司に相談したところ、返事はこうだった。「それなら副隊長を出せ」