日本語の文法とは……
1972年に発行された『カード古典文法』という本がうちにあって、著者の青木一男は高校教諭だけあって学校教育向けの内容で、「こうだ、こうだ」の羅列で、これじゃ憶えられても理解できはしないよね、というそんな感じの反省から、藤井貞和『日本文法体系』という本は生まれたのだろう。2016年の発行。
この本では、助辞/助動辞を中心に、個別の説明ではなく体系的な記述を試みている。例えば語尾に付く「き/り/し/む」は、それぞれが関連を持っていると考える。そして「り」はアリのアが落ちた形であって、…[全文を見る]
『20世紀言語学入門』と『言語学講義』
加賀野井秀一『20世紀言語学入門』
1995年に発行されたこの本は、二十世紀の末葉に在って、その百年分くらいの言語学の展開を振り返る内容。ソシュールからチョムスキー、それ以降に至る学史を追いながら、幅広さと奥行きを感じられる。切り口としては、副題に「現代思想の原点」とあるように、哲学的な面を見せている。個人的にはスワデシュの言語年代学に端を発する計量的な研究に馴染みがあるんだけど、その方面の話は出てこない。
加藤重広『言語学講義』
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町田健『言語世界地図』
世界各地の言語の状況や特徴について俯瞰的にまとめた一冊。記述は専門的言語学的な詳しい所までは及ばず、読み物として楽しみつつ、世界言語への視野を持つための導入になる内容。
欠点を挙げるとすれば、日本語を取り上げるならもうちょっと突っ込んだ方が(近代日本語の成立過程とか琉球語との関係とか)良いと思うし、北米や北東アジアの少数言語もどこかで言及してほしかったような気はするが、雑誌連載としての制約かもしれない。ただ中国語に関しては、広東語と台湾語だけを項目として立てるにとどまることは、どうしても不足という感じが拭えない。
とはいえ手頃な新書という形でこうした知識が読まれることは非常に有益であり、言語というものに興味を持つ全ての人にオススメしたい本。