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超短編のことを語る

「なにしてるんですかなにしてるんですか」
「いえ見えないと云われたもので」
「見えない? 誰にですか」
「誰だか……とにかく耳はいいものですから聞こえるとどうにも気になって」
「それでいつもの場所を降りて月をお担ぎになっていると」
「そうです」
「それはいけませんいけません」
「はあ」
「なにしろ月はあなた様の飛行力で飛び立っている」
「は」
「あなたが乗らんと月は飛ばぬのです」
「はあ!」
「なので乗ってください、さあさあ」
「飛ぶ……わたしはてっきりえんしんりょくというもので月がこう……上がっているのだと思っておりました」
「あなた月が飛んで…[全文を見る]

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大人たちが釣り糸を垂れる。竿先は重い。くり抜かれたかぼちゃがぶら下がっている。中にはこまごま包まれた菓子が詰めてある。
人がまばらな辺りまで辿り着いて腰を下ろす。連れが首を伸ばして見下ろす先は暗闇奈落。この場所がかつて高層の天辺であっただけなのだろうが。天辺も古びて並べば河のない岸である。
夜空は仄明るい。こちらと向こう岸の釣り人の手元の灯り、屋台の提灯。辺りの色はぶらぶらと揺れるかぼちゃとさして変わらない。
連れはかぼちゃを縦に割ってくり抜いてしまった。丸ごとと見比べるとすこぶる安定していない。不満が顔に出ていたらしく
「ひとり…[全文を見る]

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濃い執着も分解すれば虹の弧を描き霧散してよい程度になるとした博士の発明は、しかし実験されたどの執着にも虹を生むほどの光はなく闇が黒く虚しく残るばかりであった。
時が費やされ執着の色分解を遂げた発明は色とりどりの円をべったりと焼き付けた。震える博士の傍らで、濃い執着ほど鮮やかな色を放つのだと彼の弟子が熱弁を振るっていた。

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ああ、丸い丸い丸い丸い。この時期、きゃつは腕を曲げ、広げ、指を伸ばしたいつもの姿勢を過剰に演出せんと、大量の球をその身にまとう。
「あれはエネルギーの球に違いない」
今年もまた、世間を混沌の渦に取り巻く為、妖しさすら漂う体液の色を表出させたのだ。すでに人々も報道もそのことに浮き足立っている。
だが、私考えるところのそのエネルギー球を、「丸い」だの「球」だの指摘する声は滅多に聞かれない。今年もどうやらそのようだ。
「果たして世間はあれをどのような形と見ているのか」
妖しさを根本に死体が埋まっているとさえ表現しうる高度な感覚に、未知のエ…[全文を見る]