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Tips:スクワットは、回数を急に増やすと膝を痛める。調子を見ながら少しずつやってみよう。
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 テルレスはすっかりこの連中の影響下にあった。以下に述べるような精神状態だったからである。つまり、テルレスの年齢だとギムナジウムでは、ゲーテや、シラーや、シェイクスピアを、もしかしたらもう現代作家なんかさえ読んでいた。そしてそれらが消化不良のまま指先から出てくる。ローマ悲劇が書かれ、じつに過敏な抒情詩が書かれるのだ。何ページにもわたる句読点の衣装を、やわらかいレースの透かし編みのようにまとって、抒情詩がこちらに歩いてくる。そういう文章は、それ自体は滑稽なものだが、精神が安全に発達するためにははかりしれないほど貴重である。なにし…[全文を見る]

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美は袋小路である。それは山の頂きで、いったん辿りつくと、もう行き場がない。だからこそ、究極においては、ティッィアーノよりエル・グレコの方に、よりわれわれを酔わすものを見出せるし、ラシーヌの完全無欠な出来ばえよりシェイクスピアの不完全な出来ばえの方に、より魅力を見出すのだ。美についてはあれこれとこれまで言いすぎるほど言われてきた。だからこそ、私はそれにちょっと言いたしたまでだ。美とは審美本能を満足させるものである。しかし誰が満足したがっているだろうか? 満腹がごちそうであるという考えは、愚者にしか通用しない。思いきって事実に直面しようーー「美」はいささかたいくつなものである。
(pp.148-149、サマセット・モーム『お菓子と麦酒』)

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他の人も私と同じかどうか知らないが、とにかく私は「美」を長時間熟考することはできない。「エンディミオン」の第一行目を書いた時のキーツほど虚偽の陳述をした詩人はいまいと私には思える。美しい物が私に美的感覚の魔法をかけてくると、私の心はすばやく他へそれてしまう。景色や絵に幾時間も恍惚として見とれることができると言う人の言葉は、どうも疑わしいものだ。美は恍惚境である。それは空腹と同じくらい単純なものだ。特に云々することは何もない。バラの香りのようなものだ。人はその香りをかぐことができる。それだけのことだ。だからこそ、芸術の批評という…[全文を見る]

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私たちのうちで最も勇気がある者でも、自分が本当は*知って*いることを認める勇気を、めったに持っていない。
(『ニーチェからの贈りもの ストレスに悩むあなたに』清水本裕訳、ウルズラ・ミヒェルス・ヴェンツ編)

※けさのことば、として新聞に載ってたもの。

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報道によると、生活保護受給者が暴力団の資金源として利用されるケースが増えているとか。
(中略)
「もっとよく調べろ」と役所を責めるのは簡単。だが、福祉担当者の激務を思えば、これ以上多くを求めるのは酷だ。性善説に立つ福祉は悪用には弱い。最も責められるべきは悪用している人間。ここを見誤ってはならないと思う。 (2011年2月28日付け東京新聞25面、本音のコラム『貧困ビジネス』宮子あずさ)

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 医師は深く息をつき、模範的な落ち着きをもって言ったーー
「全部話してください」。
 そこで侯爵は話したーー司教のもとへの訪問、祈りたいという衝動、盲目的な決断、不眠の一夜。それは、自分の心を甘やかすことなく、すべての秘密を包み隠さずさらした旧キリスト教徒の降伏宣言だった。
「神の命令だったと確信しています」と彼は最後に言った。
「つまり、信仰をとりもどされたということですね」とアブレヌンシオは言った。
「人はけっして、完全に信仰を失いはしないんです」と侯爵は答えた。「いつでもかすかな疑いが残っているんです」。
 アブレヌンシオにもそれは理解できた。神を信じなくなると、それまで信仰のあった場所に消しがたい傷痕が残り、それが信仰を完全に忘れることを妨げることになる、と彼もずっと考えてきたのだった。  (pp.93-94、『愛その他の悪霊について』 G・ガルシア=マルケス)

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問題は、テレンバッハがこうした性格像を含むうつ病全体の原因論を、自らの信奉するハイデガーの哲学用語をちりばめながら説明している点だけにあるのではない。むしろ彼自身が、このような特定の性格標識に「好ましい社会的価値」を付与している点にこそ問題がある。(中略)
 たしかに「真面目、几帳面、仕事熱心、良心的」などの性格特徴は、わが国のような大量の仕事人間や過労死を生み出す社会では高く評価されやすいし、少なくともこれまでは事実そうであった。またテレンバッハをわが国に紹介した日本人精神医学者の一部も、この性格像を(とりわけ分裂気質に対比す…[全文を見る]

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発病した兵士たちのゆくえ
 
 戦時振戦は、とりわけ東部戦線の前線兵士たちのあいだであたかも「伝染病が拡がるかのように」蔓延していた。このような拡大を防ぐため、できるかぎり速やかな隔離と強力な電気ショックによる治療が大学精神科医たち(とくにミュンヘン大学精神科教授ブムケ、同助手ミュコライら)によって強く主張された。むろんこうした症状が詐病であった場合には、「責任能力あり」として「転属」が言い渡された。
 電気ショック両方によっても効果が見られないときには、無意識的な兵役拒否者とみなされ、治療の対象からはずされることもあった。一九四…[全文を見る]

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(前線に立つ精神科医)
(……)軍医の心得は「兵士の名誉心・義務心に訴えかけ戦闘意欲を可能な限り引き出す」こと、などの注意が記されている。
 また、詐病(仮病)が判明した場合には、原則として「転属」が言い渡されることになっていた。ナチスは非合法的な殺人をカモフラージュするために、さまざまな隠語をもっていたが、「安楽死」「淘汰」「特別処置」などと並んで、この「転属」もまたその一つであった。「転属」とはすなわち死刑のことである。精神疾患の診断に際して「責任能力」を鑑定するという前述の精神科軍医の役割は、おもにこのような詐病を判別することに向けられていたのである。