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連続はてな小説のことを語る

庭に目をやると、割り箸を十字に結んだ真新しい墓標が小さな土山に刺さっている
あの越前蟹の墓だ
あの日、三郎は最後の一台のスタイリーを奪うように買い、越前蟹の亡がらをおまけとしてもらってきたのだった
「それなのに、何故、また蟹が?」

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ピンポーン。ピンポーン。
玄関のチャイムに三郎は長い夢から目を覚ました。買ったばかりのスタイリーの上で寝てしまっていたようだ。蟹を食う猿。猿を食う鷲。良くは覚えていないが妙な夢だった。体が汗ばんでいる。つけっぱなしのテレビではハッピを着た男が越前蟹が安いとまくし立てている。
ピンポーン。ピンポーン。
玄関を開けると蟹とプリントされた箱を抱える宅配便の業者が立っていた。まさか…。三郎は嫌な予感がした。

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そうしている間にスタイリー(商品)はどんどん売れ、おまけの越前蟹も次々と木箱を去ってゆく
ついに最後の一台に買い手が付くと、新春大バーゲンのハッピの男が申し訳なさそうな笑みを浮かべて、三郎の腕の中の越前蟹に手を伸ばした

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スタイリーはふと考えた。蟹の身は全て、猫と三郎にくれてやろう。
問題は出汁である。味噌のことは考えたくなかった。

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猫は木箱に手をかけ伸び上がり、三郎の頬を伝う涙をなめた
それが三郎の悲しみをいっそうかき立て、三郎はおうおうと声をあげて泣いた
スタイリーは静かにお湯を沸かしていた

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美しく旋回する赤から液体が四方に飛び散っていた。
涙だ。
そういうことにしておいてください、と越前蟹は思った。

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「なんて美しいオッドアイだ」

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テレビショッピングというものにおいては「越前蟹2匹でこのお値段」「ちょっと待って、今なら同じお値段でもう1匹お付けします」などとダンピング価格で売られているのである。しかも、その蟹は越前蟹とは名ばかり、どことも知れぬ外国産の蟹であることは、越前蟹自身の目から見れば明らかであったのだ。

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「なんだい?貧弱な坊や」
きらりと歯を光らせて、こんがりと日焼けをした男が答えた
スタイリーをしながら
説明しよう
本来、スターリーはプールサイドに長椅子のような形状をした運動器具に横になり、「スタイリースタイリー」と口ずさみながら、ぎったんばっこんするものであるが、その男は直立した状態で背部にスタイリーを密着させ、直立した状態で軽やかにぎったんばっこんしつつ、三郎に声をかけたのだ
たくましい腕で越前が似の脚を掴みながら

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「…………っ」
越前蟹の声が聞こえた気がして、三郎は、「えっ、なに?」と声に出して聞き返してしまった。その事態について検証する間もなく、後ろからたくましい腕が伸びてきて蟹の脚を折ろうとした。鍋に湯がたぎっていた。
「やめてくれ!」
三郎は叫ばずにいられなかった。

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スタイリーの後に年季の入った木箱が見えた
中に大鋸屑に塗れた越前蟹の姿があった
微かに左鋏を震わせて、越前蟹は三郎を見つめた

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地下世界に君臨したはずの会長であったが、どうやらアメリカ生活が忘れられず、アメリカから大勢の僕どもを呼び寄せたらしい。

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φ(・ェ・o) 。o0( …えーっと、会長が登場っと… )
φ( ゜д゜) 。o0( …え!?…英語!?… )

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三郎がシャワーを済ませる頃には、撤収作業は全て終わっていた。先ほどまで辺りに立ちこめていた練乳と苺の甘い香りは消え去り、地下闘技場にはカビ臭いコンクリートと湿った土の匂いが戻っていた。

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もしやもしや…もしやもしや…
いかん!これでは「岸壁の母」ではないか。

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いや…まさか…しかし、やはり…

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狭いロビーに設けられた物販コーナーには、レスラーグッズの他に西家表札ストラップや、氏神さまのお札やお守り、穫れたて野菜や手作りジャム(嘘偽りなく手作り)が並んでいる。新春公演のポスターを見るともなく眺めながら、三郎は淡々とチケットをもぎっていた。

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「純米 雪苺娘」が己のうちに解き放った奔放な想像力の波にいまだ翻弄されながら、三郎はよろめく足取りであの地下闘技場へ向かった。…それとも闘鶏場であっただろうか。

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その出会いはまるで航海だった。
勢い口に含んだ 「純米 雪苺娘」はその果実酒じみた芳醇な香りの荒波で混濁とした虚無の底へとちくわぶを飲み込み、そしてその果汁はあたかもセイレーンの歌声のように岩礁へとまた三郎をのせた船を引き寄せるのであった。
三郎は航海の果てに後悔を知ることとなる。

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三郎はちくわぶがすきだった。あんなものただの小麦だろう、と言われても好きだった。小麦を練った固めたものを「竹輪」などとは片腹痛いわ!と、ちくわ好きの叔父に蔑まれても、三郎はちくわぶを愛し続けた。