そしてまた、この連作は、時間の流れと人の一生のみならず、
アルチンボルドが仕えたハプスブルク家を賛美する寓意もこめられている。
四季の自然の恵みは、すべてハプスブルク家の領土で
とれるものであり、その権力を象徴する。
巡り続ける四季は、ハプスブルク家の治世が
永遠に続くようにとの寓意である。
そして、「冬」の、枯木でかたどられた老人が纏うむしろには、
ひそかに "M" が織り込まれており、それは、この連作が
献上されたマクシミリアン2世を表し、年頭、つまり
"1年の最初" である冬に皇帝をなぞらえたのは、皇帝への賛美の気持の表現である。
これら込められた寓意に いたく感動した皇帝マクシミリアン2世は、
寄贈品とするために、同じ作品を何度も描かせたという。
ルーヴル美術館にある 『四季』 は、ザクセン選帝侯に寄贈されたものだという。
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美の巨人たちのことを語る
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四季それぞれを想起させる 季節ごとの自然の恵みを、
人の形に組み合わせることによって 肖像画として表現した
春夏秋冬の連作、『四季』。
「春」は、ひとつひとつの種類が判別できるほど細部まで描かれた
花を組み合わせ、少女をかたどっている。スペインの美術館所蔵。
「夏」は、新鮮な果実を組み合わせて 青年をかたどっている。
「秋」は、豊穣に実った作物を組み合わせ、壮年の男性を
かたどっている。「秋」は所在不明で、現在のものは のちに制作されたものである。
「冬」は、朽ちかけたように見える枯木で、老人をかたどっている。
巡る四季によって、時間の流れと、人の一生を表している。
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ミラノ生まれと言われるアルチンボルド。
もとは、同じく画家である父とともに教会の絵画などを
手がける宗教画家だったという。
35歳の時、宮廷画家として、ハプスブルク家のおさめる
ウィーンに招かれた。
そして、フェルディナント1世、マクシミリアン2世、
ルドルフ2世ら 3人の皇帝に仕えた。
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今週から4週連続の、奇想の芸術シリーズ①
今週は、ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593)です。
今日の作品は、春夏秋冬の連作 『四季』(1563)です。
アルチンボルドは、オーストリアはウィーンで、
3人の皇帝に仕えた 16世紀の宮廷画家。
この 連作『四季』 は、ハプスブルク家のコレクションからなる
数十万点を所蔵する欧州屈指の美術館であるウィーン美術史美術館や、
スペインの美術館にあり、また、所在不明のものもある。
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ちなみに、"ミステリー絵画シリーズ" として この番組で取り上げられた
『イカロスの墜落の風景』 であるが、そのミステリー …
なぜ、よりによって 海に墜ちるイカロスを誰も見ていないのか、
なぜ、羽根を固めたろうが溶けるほどであったはずの太陽が 水平線の向こうに沈みかけているのか―
ブリューゲルの時代、ベルギーは、スペインのハプスブルク家の
圧政に苦しんでいた。そして、圧政に抵抗した多くの名もなき市民が死んでいった。
つまり、この絵の太陽は、スペイン ― フェリペ2世を表す。
羽根をろうで固めて必死で飛び立つも、太陽の熱によっ…[全文を見る]
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しかし、この作品のX線写真を撮ったところ、
出来上がった作品では 構図から消えているものの、
ラフな下描きの段階では、草むらで用を足す農夫が 小さく描かれていたことがわかった。
これが、一見すると脈絡なく(本当は寓意がこめられている)
変わった人物像を描きこむブリューゲルのスタイルに一致する、と 判断された。
更に、ブリューゲルはもともと、イカロスの神話を
版画にもするなどして、たびたび自らの作品の題材にしている。
それにより 研究者は、この 『イカロスの墜落の風景』 について、
もともとはブリューゲルのオリジナルであった作品を、後…[全文を見る]
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ほかにも理由がある。
中心に描かれた農夫が押す 手押し車の車輪は、
畑を耕す方向に まっすぐ向けて描かれているのに、
その農夫の足先の向く方向は 左にそれており、それが、
実際に農村を訪ねてデッサンをしてまで 農民の姿を
描いていたブリューゲルのものとしては、リアリティーに欠ける、という理由である。
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この、ベルギー王立美術館が収蔵する 『イカロスの墜落の風景』 には、
作者の表記に 「?」 が付く。 それは何故か。
この作品は、薄いキャンバスに描かれ、それが板に貼り付けられている。
しかし、ブリューゲルに、このほかにキャンバスに描かれた作品はない。
それによって、果たしてブリューゲルの作品であるかどうかの 疑いが出てきた。
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ブリューゲルの生年は 不明である(没年は1569年)。
ベルギーはアントワープの、画家組合の名簿に
書かれた その名で、初めて歴史上に登場した。
この 『イカロスの墜落の風景』 がロンドンで見つかり、
1912年に 故郷ベルギーに戻った時には、
ベルギーを代表する画家の作品が戻ったと、国をあげて喜ばれたという。
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10月は、4週連続、ミステリー絵画シリーズ。
今週は、ピーテル・ブリューゲルの作品であると伝えられている
『イカロスの墜落の風景』 です。
ろうで固めた鳥の羽根で飛び立つも、太陽に
近づきすぎて墜落したというイカロスの、
有名なギリシャ神話を 題材としている。
しかし。 まるでイカロスが主役に見えない この作品。
イカロスは、画面のすみで 海に墜ちている。
墜ちるイカロスを、農夫も羊飼いも、誰も見ていない。
― なぜ、こんな イカロスの神話を描いたのか。
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フォンテンブロー宮殿で見つかったルーヴル版は、
1625年当時、この宮殿に飾られていたことがわかっているという。
それは、ルイ14世の在位中。
あくまでも "確証のない話" として 番組内で紹介された説は―
ジャンヌという名をラテン語読みにすればヨハンナ、その男性名はヨハネ。
王の子を産めないなら意味がないと、ルイ14世が
遠ざけたことのある女性の名がジャンヌだった。
しかし内心ではジャンヌを思っていた王は、この絵を手に入れ、
レオナルドに 大天使ガブリエルが洗礼者ヨハネを
さししめすように描き直させ、この絵をジャンヌ(=ヨハネに重ねた)に
ささげたのではないか、とする仮説である。
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制作後、代金等をめぐって、25年ものあいだ裁判になった 『岩窟の聖母』。
最近になってからの解析でわかったことによると、
ルーヴル版の大天使ガブリエルの手や顔の向きは、
25年の裁判のあいだに 描き直されたものだったという。
つまり、最初は、天使の顔の向きは
ロンドン・ナショナル・ギャラリー版と同じで、
洗礼者ヨハネをさす手も 描かれていなかった。
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10月の美の巨人たちは、ミステリー絵画シリーズ。
今週は レオナルド・ダ・ヴィンチです。
今日の作品は、ルーヴルとロンドン・ナショナル・ギャラリー、
2枚の 『岩窟の聖母』。
ルーヴル版では 大天使ガブリエルがその手で幼き洗礼者ヨハネをさししめし、
ロンドン・ナショナル・ギャラリー版には ルーヴル版にはない光輪とヨハネの杖―
はたして、どちらが先に描かれたのか。
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今週は ヒエロニムス・ボスでした。
作品は 『快楽の園』(1510年前後)。
もはや美術館の存在そのものが スペインの至宝と
言えるであろうプラド美術館に、この ボスの代表作はある。
伝統的な形の 三連の祭壇画であり、祭壇の扉を開いた時、
左に天国、中央に現世、右に地獄が描かれているのも
伝統に則った描き方だが、奇想あふれる現世や地獄の情景は、
ボスでなければ発想できない、とすら思わせる独創性である。
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来週は ヒエロニムス・ボスの 『快楽の園』。
かなり楽しみーー
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夏の恒例、 "日本の建築シリーズ" Vol.4
今週は、 『日光東照宮 国宝 陽明門』 です。
徳川秀忠、家光の時代に完成。
豪華すぎるほどの装飾、それを手掛けた
当代きっての大棟梁と天才絵師の、
並々ならぬ気合いの入った力作。
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詩仙堂!
京都で一番好きな場所!
また行きたいなあ。
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モーガンが日本に建てた自邸(数年前に火事にあい、
現在修復を待っている)は、和洋折衷で、モーガン自身の設計。
外観は、日本の瓦を使いながらも 煙突もあるという不思議なスタイル。
内装も、スパニッシュ様式を取り入れた部分もあれば、
日本のものも取り入れている。
そしてモーガンは、故郷アメリカに帰ることなく、日本で その生涯を終えたという。
自らの邸にまで 日本建築を融合したモーガンが、
いかに日本を愛してくれたのかがわかる。
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モーガンが設計したベーリック・ホールの主であるベーリック氏は、
文具や化粧品を輸入、日本からは和紙などを輸出して富を得た
イギリス人だという。
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建築技師として日本に来たJ.H.モーガンは、
ひとりの日本人女性と知り合って 日本文化に触れて
日本びいきとなった。 日本建築に住んで、
家にいる時は 普段着として着物を着ることもあったという。
関東大震災後の横浜に事務所を移した時も、
その女性が通訳兼秘書として仕事をした。 ふたりはその後も共に生きたという。