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万葉集のことを語る

山背国で作られたという歌の一つ。わりと簡単なやつです。

原文:氏河歯与杼湍無之阿自呂人舟召音越乞所聞
訓読:ウヂカハ‐は/よど‐せ/なか‐らし/あじろ‐ひと/ふね/よば‐ふ/こゑ/をち‐こち/きこ‐ゆ
解詞:宇治川(地名)‐助詞(提示)/淀む‐瀬(が)/無い‐助動(様子)/網代(漁具)‐人(が)/舟(を)/呼ぶ‐助動(継続)/声(が)/遠‐近(に)/聞く‐助動(可得)
意訳:宇治川は淀んだ瀬が無いことを示すように、網代漁師の舟を呼んでいる声があっちこっちに聞こえる。
(1135)

網代漁は冬場にするということなので、きんと冷えた盆地の川を背景に想像すると良いようです。ひえびえ。

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万葉集のことを語る

近江の旧都を通った時に柿本人麻呂が作ったという歌。

原文:楽浪之思賀乃辛碕雖幸有大宮人之船麻知兼津
訓読:ささなみ‐の/しが‐の‐からさき/さきく‐あれ‐ど/おほみやひと‐の/ふね/まち‐かね‐つ
解詞:ササナミノ(枕詞)/シガ(地名)‐助詞(所属)‐カラサキ(地名)/幸く‐存る‐助詞(逆接)/大宮人‐助詞(所属)‐船/待ち‐かね‐助動(即当)
意訳:ささなみの滋賀の唐崎がそのままあるのはいいけれど、大宮人の船は待ってももう来ないのだ。
(30)

わずか数年で放棄された近江大津宮。天智天皇は琵琶湖に思い出があったらしく、船で遊覧することを好んだという。その船…[全文を見る]

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万葉集のことを語る

有名な山上憶良の「貧窮問答歌」の長歌に付された短歌一首。

原文:世間乎宇之等夜佐之等於母倍杼母飛立可袮都鳥尓之安良袮婆
訓読:よのなか‐を/うし‐と/やさし‐と/おもへ‐ど‐も/とび‐たち‐かね‐つ/とり‐に‐し/あら‐ね‐ば
解詞:世の中‐助詞(対象)/憂鬱‐助詞(左様)/苦痛‐助詞(左様)/思う‐助詞(逆接)‐助詞(並立)/飛ぶ‐立つ‐かねる‐助動(近接)/鳥‐助詞(着点)‐助詞(強意)/ある‐ない‐助動(条件)
意訳:世の中をウツだイヤだと思うけども、飛び立てもしない、鳥じゃあないもん。

「〜つ」は「〜ぬ」とはどう違うのか昔から色々議論がありながら、教科書だと…[全文を見る]

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万葉集のことを語る

第十巻の冒頭に載せられた、柿本人麻呂の歌集から採ったという「霞」を詠み込んだ歌七首のうちの一つ。

原文:久方之天芳山此夕霞霏霺春立下
訓読:ヒサカタノ/あめの‐カグヤマ/こ‐の/ゆふ‐べ/かすみ/たなびく/はる/たつ‐らし‐も
解詞:ヒサカタノ(枕詞)/天の(美称)‐香具山(地名)/指示(近称)‐助詞(所属)/夕‐辺/霞/たなびく/春/立つ‐助動(相応)‐助詞(詠嘆)
意訳:久方の天の香具山にこの夕方、霞がかかっている。春の気が起こるのを表すようだね。
(1812)

この七首のうちの五つに「霞霏霺」という字があり、最後の一首には「霞多奈引」とあるので、「霏霺…[全文を見る]

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万葉集のことを語る

この歌はわりと現代語の感覚でもそのまま読みやすいかと。

原文:海未通女棚無小舟榜出良之客乃屋取尓梶音所聞
訓読:あま/をとめ/たななし‐を‐ぶね/こぎ‐づ‐らし/たび‐の/やどり‐に/かぢ‐の/おと/きこ‐ゆ
解詞:海人(の)/少女(が)/簡素な‐小舟(にて)/漕ぐ‐出る‐助動(形容)/旅‐助詞(属性)/宿所‐助詞(着点)/舵‐助詞(所属)/音/聞く‐助動(可得)
意訳:海人の少女がちっちゃい舟で漕ぎ出るっぽく、旅の宿に舵の音が聞こえる。
(930)

万葉集の言語は1300年くらい前の日本語です。比較できる数字を出すと、英語と独語の分かれたのが、歴史的事実から1500年くらい前とすると、それより近い距離です。英語と独語と、海で隔てられてそれぞれで独自の変化を経たので、両言語間の相対距離はほぼ3000年にもなります。そうすると現代日本人が万葉集の言葉を理解するのは、ロンドンっ子が現代ドイツ語の詩を読むより、二倍以上簡単だと思います。

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万葉集のことを語る

古語のままで読めるようになろう、ということをやっていきたい。

ちょっと前に万葉集の現代語訳の本がちょっと話題になっていて、それに対してどうこうじゃないんだけど、一般論的には現代語にしちゃうとどうしても伝わらないことがある。

原文:山越乃風乎時自見寐夜不落家在妹乎懸而小竹櫃
訓読:やまこし‐の/かぜ/を/ときじ‐み/ぬる/よ/おち‐ず/いへ‐なる/いも‐を/かけ‐て/しのひ‐つ
解詞:山越し‐助詞(属性)/風(が)/助詞(感嘆)/時期外れな‐助詞(原因)/寝る/夜(に)/落ちる‐助動(否定)/家‐助詞+動詞(に+在る)/妻‐助詞(対象)/懸ける‐助詞(状態)/偲ぶ‐…[全文を見る]