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id:riverwom
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「ともかくも今の大学が,ただ好きなことを考えていたい人間にとっては暮らしにくい場所になってきていることは確かであって,禅僧をたくさん集めて共同生活させておけば誰か一人くらいは悟るだろう,という種類の鷹揚さはなくなっている」(円城塔,「数学セミナー」 2017年8月号)

わはは、鷹揚なたとえ!(笑)

id:molan
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私は家族から一切の期待をかけられなかった。勉強をしろとは言われず、炎天下の庭で虫を見続けようが、雨水のたまった泥を掘り続けようが、ほうっておいてくれた。6歳の私が、大人のげたをはいて踊っていたのはフレッド・アステアのまねだとは、誰も知らなかったが、私は満足だった。世界をどんなふうに感じるかは全て私の自由だった。そのことが、今の私の人生をとても豊かにしてくれていると思っている。
(木皿泉・7月2日神戸新聞「木皿食堂」より)

id:molan
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ちなみに私が好きなのはダンナである。ひっくり返るのを恐れて、亀のように首を前に伸ばしながら、そろそろ車いすを自走させている姿を見るのが大好きである。65歳のオッサンのくせに、赤ちゃんのようなつやつやした顔で無防備に眠っているのを見るのも好きである。私の生活は、このダンナの介護を中心にまわっている。人から見れば私はいつも鎖に縛られていて、その先にこの車いすのダンナがぶら下がっているように見えるだろう。さぞかし重いでしょうと同情されているかもしれないが、そうではないのだ。いつも、好きという重しをぶら下げているおかげで、私は途方もない場所へ流されてしまうことはない。私が、どこにいても私らしくいられるのは、私の好きな彼のおかげである。
(木皿泉・6月4日神戸新聞「木皿食堂」より)

id:dominique1228
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サラリーマンという職業はないように、大学生という抽象物が存在しないように、普通の人なんて本当はいない。
絶対人前に言えないような性癖は、誰しも一つくらい持っていたりするものだ。そんな病気を隠すのが上手い人が多いだけだ。普通の友情もなければ、普通の恋愛もない。普通の幸福もない。
重病の人が生きやすくなるためには、なんとか病気を治してなんとか普通の幸福を追求しようとするよりも、その病気を形にして周りに撒き散らし、流行らせてしまうのが一番良い方法じゃないかと思われる。
ただのメンヘラはだめだ。しかしメンヘラの神様は最高な奴ばかりである。
その病気を撒き散らしきった後、女にも男にも、総じて人間は大して個性などないということがはっきりと証明されるだろう。
そして、病気であったことが、いつか救いになるだろう。

『劣等感は可愛い』(「いつか〜」所収)

id:dominique1228
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最終的な人生の質はその人の美醜でも
年収でも学歴でもなく、出会った人と、
その人となにを話すことができるかだと思う。
受験や就活で失敗しても、
好きになれそうな人、憧れるほどかっこいい人や、
騙されてもいいと思えるような人に出会えたら、
それが一番良いと思っている。

「いつか別れる、でもそれは今日ではない」

id:dominique1228
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ずっと一緒にいたい、という執着より、
いつかは別れる、という覚悟を。
なにかしてほしい、という甘えよりも、
なにかをしてあげたい、という御節介を。
哀しい、という脆弱性よりも、
哀しくさせられて嬉しい、という少しの異常を。

「いつか別れる。でもそれは今日ではない」F (KADOKAWA)

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大人というものはどんなに苦労が多くても、自分のほうから人を愛していける人間になることなんだと思います。
いわさきちひろ「大人になること」

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記憶と言うてもな、映る筈もない遠すぎるものを映しもすれば、それを近いもののように見せもすれば、幻の眼鏡のようなものやさかいに
(三島由紀夫・天人五哀)

id:dadako
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マリ それによって多くの悲劇を生んだし、複雑なアイデンティティがあるのですが、一方で文化は多様で豊かになりました。古くはフェニキア、ギリシア、北アフリカのカルタゴ、古代ローマ、その後はアラブ、ノルマン、フランス、スペインと、時代ごとに支配する国が代わり、それぞれが自国の文化を持ち込んだ結果、それがシチリアで堆積しています。
とり 実は、僕もシチリアにちょっと縁があるんです。というのは、初めてイタリアを訪れたのが、シチリア東部の都市・カターニアだったのです。当地で開催されたマンガフェスティバルに呼ばれたわけですが、本当は吾妻ひでおさんが行くはずだった。でも当時の吾妻さんは療養中(笑)であらせられたので私が代役で。
(『プリニウス1』)

多様な文化の堆積の結果、そんなメンツを呼ぶディープなマンガフェスをやる地になったわけですな。

id:gustav5
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電子情報化社会が進んだ社会では誰もが自由に意見を発信できる。そのこと自体は悪くありません。しかしツイッターは短文です。複雑なことを発信する人はまずいません。笑い顔、泣き顔の顔文字がありますよね。ああいう単純な感情。ずっと思ってるのだからという惰性的な思考。ツイッターはそういうものに向いています。
次の問題は匿名性です。アニノマス(匿名者)という集団が仮想空間現れました。そうした世界では人々は感情を抑えることに欠けるようです。
(中略)
もう一つ働きやすい原理が過剰適応です。すなわちある集団の中で議論をすると必ず過激なものが勝つ。第二次大戦中も天皇陛下のためなら死ぬとなったら特攻隊まで行き着いた。ツイッタもそうなる可能性があります。
(後略)
(1月5日毎日新聞・山埼正和元阪大教授)

id:hide-psy
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いかなる政治的主張も含まないこの小説は、それにもかかわらず、陸軍省報道部の忌諱に触れて発禁処分を受け、私家版の頒布さえ禁じられた。おそらく検閲官は『細雪』の全篇の行間から流れ出る「日本における『よきもの』はことごとく不可逆的な滅びのプロセスのうちにある。だから私たちの最優先の仕事はそれを哀惜することである」という谷崎の揺るぎない作家的確信に、一種の恐怖を感じたのだろうと思う。この耽美的な書物のうちに黒々とした「日本の未来に対する絶望」を感知した検閲官の「文学的感受性」に対して私は一抹の敬意を示してもよい。

内田樹 新装版『細雪』解説(角川文庫)
http://blog.tatsuru.com/2016/12/16_1143.php

id:ckagami
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カラクスに着くやいなや、疲れきった皇帝はペルシア湾の重い水の広がりに向かって、砂浜に腰をおろした。それはまだ彼が勝利を信じて疑わなかったころであったけれども、しかしはじめて世界の茫大さが彼を圧倒し、また、老齢の感懐、われわれ皆を取り囲む限界の感情が彼をおしひしいだのであった。よもや泣くことがあろうとはだれも思いもよらぬこの人の皺寄った頬に大粒の涙が流れた。これまで踏破したことのないかずかずの岸辺にローマの鷲を持ち込んだこの将軍は、あれほど夢みたこの海に船出することはけっしてないであろうと、いま悟ったのだ。インディア、バクトリア、彼がはるかに憧れていた蒙い東洋全体が、彼にとってはどこまでもただの名前と夢とにすぎぬものとなるであろう。
マルグリット・ユルスナール、多田智満子訳『ハドリアヌス帝の回想』白水社、2008、p98。

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×愛の賞品をあつかう税関
○愛の商品をあつかう税関

id:dadako
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レンザが王子のあいさつに応え、かすかにほほえみかえしますと、彼は勇気をふるい起こし、窓の下に近づいて言いました。
「さらば、自然のあらゆる恵みのプロトコル、天の贈り物の総目録、さらば、美の証書の全体要覧」
 レンザは、この絶賛の言葉を聞くと顔を赤らめ、この恥じらいが彼女の美しさをいっそう引き立てました。これがチェチオの炎に新しい燃料を加え、その傷口に熱湯を注ぐことになりました。求愛合戦に負けてなるものかとばかり、レンザも応じました。
「ようこそ、優美の薬味を備えた薬局、おお、美徳の宝物庫、おお、愛の賞品をあつかう税関」

id:dadako
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 王子は、この自然の比類なき宝石箱、天が最高額の預金をした銀行、愛の最強の兵器庫を見ると、頭がくらくらするのを感じました。そして、娘の輝くような丸い顔から目の光が放たれ、彼の心の火口に触れた時、王子はおのが希望の家を建てるための煉瓦を焼く溶鉱炉となったのです。
(中略)
「どこの牧場から、この美しい花ははえたのだ。どこの空から、この恵みの露はおりたのだ。いったいどこの鉱山から、この目にもあざやかな宝石は掘りだされたのだ。おお、幸せの森よ、幸運の林よ。そこに愛の饗宴の明かりに照らされた、光輝が住まうとは。おお、森よ林よ、お前が作るのは、ほうきの柄でも、くまでの横棒でも、何かの容器のふたでもなく、美の寺院の扉、美の女神の神殿の梁、それに愛の矢がらのみだったとは」
(『ペンタメローネ』2日目第7話/鳩)

イタリア人強烈。冒頭、彦摩呂か(笑)

id:hide-psy
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「悩んだ時は筋トレってアホか? 一時的に気分はスッキリするかもしれないけど悩みの根源は断てない」って思うじゃないですか? 違うんですよ。ほとんどの悩みは根源なんてない気分的な問題なんですよ。

「筋トレが最強のソリューションである」Testosterone (著)

id:hide-psy
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"「マウスから作った『AIM』(腎機能を改善するタンパク質)を投与するための動物薬の実用化に向けて、臨床研究を始めています。我々は三年後の実用化を目指しています。予防的にも腎臓が悪くなる五歳くらいからワクチンのように年に一回くらい定期で『AIM』を打つようになれば健康でいられると思います。今までの平均寿命が十五歳だから、これからは二十五年くらい生きる猫が増えるでしょう」
ニャンとも希望に満ちた話ではないか。"

猫の寿命が10年延びる東大研究チームの画期的論文~週刊文春11月24号

id:dominique1228
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私の通った大学には、変わった名前の先生が多かった。
たとえば、学内の掲示板に〈来週水曜日のロボ先生の宗教学IIの講義は休講です〉などと貼り出される。
ロボ先生! 私たちはどよめいた。 全身メカかよ!
別の日には〈何先生の倫理学の教室が変更になりました〉と貼り出される。
何先生! 私たちはまたどよめく。 何先生って何!
そんなことになるのは、たぶんその大学がイエスズ会系だったせいだ。教員の何割かは、いろいろな国のイエスズ神父によって占められていた。ロボ先生が何国人かはわからなかった。
きわめつきは、ラブ先生だった。

岸本佐知子 「愛先生」(「なんらかの事情」所収)

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「〆切本」という作家の〆切にまつわる文章を集めた本の、中央公論の書評からの引用なので、孫引きどころかひ孫引きでありますが。

「書けないときに書かすということはその執筆者を殺すことだ」(横光利一)
「仕事はのばせばいくらでものびる。しかし、それでは、死という締切りまでにでき上る原稿はほとんどなくなってしまう」(外山滋比古)

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 私のダンナは介護が必要で、それは悪くなることはあっても、良くなることはない。ふだんは忘れているが、そんなことをときどき思い出し不安になる。ケアマネージャーに、私たちどうなるんでしょうね、と相談すると、彼女は「それなりになんとかなるもんです」ときっぱりと断言する。それを聞くと、別に何かが変わったわけではないのに、私たちはほっとするから不思議だ。気休めだけで生きて行けるほど、人生は甘くないのは知っている。でも、自己責任ばかり言われ続けている私たちは、ときどき自分より大きなものに大丈夫と言ってもらいたくなる。
(木皿泉 2016年11月6日神戸新聞「木皿食堂」より)