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花うさぎ無計画発電所のことを語る

 あなたの髪を一筋すくいあげてくちづける。その瞼がわずかにあがる。とても眠いという顔をしていた。けれどそうは訴えなかった。だから艶やかな黒髪を指で梳きながら体重をのせた。あなたはおれの様子が違ったことに気づいて目をみひらいた。その睫毛を唇ではさんで瞼をとざす。感じてて、と言葉を流しこんでからあなたの両耳をゆっくりと塞ぐ。あなたは、あ、という慌てた顔をした。でもその腕も脚も布団のしたで、おれが押さえつけてある。
 あなたはおれの企みに気づいて唇をかたく閉ざしている。眠いのにこんなふうなやり方で起こされて不機嫌なのだ。その寄せら…[全文を見る]

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花うさぎ無計画発電所のことを語る

 アパートの少し前で自転車をおり、あしおとを忍ばせて歩いた。あなたは耳がいい。そして眠りが浅い。
 無言で玄関をあけてあなたが起きだす気配がないのをたしかめた。おれはしまっておいたマフラーを包みから出して、ハンガーにかけられたあなたのコートにふわりとまとわせた。そこで気がついた。ポケットに小さな箱があるのを。
 おれはそれを手に取った。開けずにはいられなかった。
 黒蝶真珠のカフスだった。
 香音を爪弾くあなたの手、その手首を飾るアクセサリーをじっと見つめた。ごく素直に、あなたに似合うと感じた。と同時に、幾らするのだろうと考え…[全文を見る]

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花うさぎ無計画発電所のことを語る

 プレゼントを用意した時点でおれはかなり舞い上がっていた。あなたはきっと巧く切り抜けるだろうと楽観した。ところが、翌朝あなたは予定の時刻に帰ってこなかった。
 あなたがおれに合い鍵を渡したときの条件は依頼に出ているあいだ緊急のこと以外で連絡をくれるなということと、もし予定時刻をすぎて連絡もなく帰宅しなかったときは二十四時間後に警察でなくまず師匠と店長に連絡をいれることだった。
 昼まで待とうと決意した。午後はゼミがある。あなたはおれが大学をサボるのを嫌った。
 おれはあなたを信じる。
 信じて待つ以外することはない。
 正午をま…[全文を見る]

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 研究室をあとにして街へでた。イルミネーションで飾られた街路樹を見て、あなたにマフラーを贈ろうと思い立った。寒がりのあなたが喜びそうな、軽くて暖かくて、何よりもあなたに似合う綺麗な色のそれを。
 おれが仕送りをもらっているのをあなたはよく知っている。同じコンビニで働いているので収入がいくらになるのかも隠しようがない。シルクのパジャマをプレゼントしたときもあなたは顔をしかめた。それが稼ぎに見合わぬ贅沢なモノだと感じたせいもあるだろう。
 色男と揶揄(やゆ)されて腹が立たなかったとはいわない。あなたより年下で、学生で、その言葉通…[全文を見る]

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[空目]
×男色の自覚
○色男の自覚

俺、疲れてるんだな・・・

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 翌日、教授に研究室に呼びだされた。コーヒーを目の前に置かれて面倒なはなしになると覚悟した。そういうおれの表情をきちんと読みこんで、教授は前置きもなくきりだした。
 昨夜あなたの大切なひとの依頼人からあなたと面会したいとの連絡がありました。
 おれは黙って続きを待った。
 私はその要求を撥ねつけました。ああ、あなた自身は上手くやるでしょう。私はそれを否定しません。ですが、依頼人のほうはどうでしょう。金にあかせて若く魅力的な魘使いを愛人にしてきたのに今回はそういかない。その理由があなたでは、いかにもおはなしになりすぎる。
 教授…[全文を見る]

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 十二月も半ばのことだ。あなたはその日珍しく、夕方から出ていった。いや、本来ならそれは珍しいことではなかったはずだ。けれど例の依頼人はあなたを昼間独占してきた。それがその日はちがった。とうとうその依頼人と一晩過ごすことになるのだとおれは正直気が気ではなかった。
翌朝、黒のドレスシャツをきて帰ってきたあなたは開口一番、店で着替えさせられたと説明した。 おれは肯(うなず)いて、そのままあなたを強く抱き寄せた。
 あなたの懊悩(おうのう)が胸を焼いた。嫉妬ではなく。
 いや、それは嘘だ。
 おれがあなたに絹のパジャマを贈ったのと似た…[全文を見る]

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 つぎはカシミアの黒いセーターだった。
 あなたはそれをおれに見られたくなかったらしい。クリーニング屋で他に預かっているものがあると店のひとが気を利かせてくれたせいでわかった。おれはもちろん引き取らなかった。あなたはそれを着て依頼人のところに出向くのだから。
 ため息をついてばかりいるあなたの横顔を思い浮かべる。ダブルワークの大変さもあっただろう。あなたは人並み外れて体力があるとは言い難い。けれどおれは、あなたがこんなふうに疲れているのが忙しさのためではないと知っている。あなたはむずかしい依頼を受けるのが好きだ。あなたの力を…[全文を見る]

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ちょっと、無茶をするw
今までも書きあげてないものを連載してったんだからもうイイじゃん、的に。
でも、小咄こそ完成度が問われるのだがもう、とりあえず「始まり」が決まれば「終わり」は見える、ということをカルヴィーノ様に諭してもらったのでそれを信じることにした。

小咄「マフラー」

 一

 はじめは黒のカシミアマフラーだった。
 十二月にはいってすぐの金曜の夜、あなたはそれを巻いて帰ってきた。そして、おれに見られて顔を背けた。その前日から急激に冷え込んで、あなたはコートの襟を立て紺のウールのマフラーをして出かけたはずだ。それはバッグの…[全文を見る]

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茶 「卵98円セール一択 というこの結果をどうご覧になりますか」
黒 「あー まずはご苦労様と言いたいですね。そして感謝の気持ちを伝えたいです!」
茶 「は はぁあ・・・」
黒 「だってそうだろ?この長い連載期間を支えてくださるひとが居なかったら今の我々はナイんだから」
茶 「そのみなさまが敢えて敢えて選んだ卵98円セールの意味を我々は今問い直すべきだと・・・」

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Q ふたりはどこへ行くつもりなのでしょうか

1 映画
2 つれしょん
3 パチスロ
4 買い物 4時の卵98円セール
5 だれかのおうち

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あの日のことをよく思い出せないのに
あなたがゆっくりといつもと同じ仕草で傘をひらいたのを憶えている

もう急ぐ必要はないと
それが語りかけた