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Tips:ルビ記法:[文字(もじ)]の様に書くと文字もじとふりがなになる。
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【ナポリの乞食】
 ナポリに住んでいたとき、わが王宮の戸口に女乞食が立っていて、わたしは馬車に乗る前にこれに硬貨を投げ与えていたものだ。ある日、この女がまるで感謝のしるしをみせないことに不意に戸惑って、わたしは女をじっとみつめた。乞食だと思っていたものが実は赤土と腐りかけたバナナの皮のつまった緑色の木の箱だということが、まさにこのときわかった。
___マックス・ジャコブ『骰子筒』(1917)

ボルヘス怪奇譚集(柳瀬尚紀訳)晶文社. p. 65.

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【社交の上首尾】
 召使いがわたしの外套と防止を差し出した。わたしは自己満足にほてる思いで夜のなかへと歩き出した。「愉快な晩だった」とわたしは思った。「この上なくいい人たちだ。財政とか哲学とかの話に聴き惚れてくれた。豚の鳴き声を真似たときなど腹をかかえて笑ってくれたし。」
 ところがまもなく、「ふん、身の毛がよだつ」とわたしはつぶやいた。「死んだほうがましだ。」
___ローガン・ピアソール・スミス『トリヴィア』(1918)

ボルヘス怪奇譚集(柳瀬尚紀訳)晶文社. p. 120.

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【出会い】
 ローマに対する憎しみの下で育てられ、ローマを壊滅すべく教育されたので、ハンニバルとハスドルバルの兄弟は、一方は南から、他方は北から、イタリアに侵入した。兄弟は11年間顔を合わせなかった。ふたりは勝利の日にローマで出会う計画だった。しかし執政官ガイウス・クラウディウス・ネロはメタウルス川の堤でハスドルバルを破った。彼はハスドルバルの首を斬って、ハンニバルの陣地へ投げ込むよう命じた。かくてハンニバルはハスドルバルが敗北したことを知った。
___ルイ・ブロラ『マルセーユの関税』(1869)

ボルヘス怪奇譚集(柳瀬尚紀訳)晶文社. p.136.

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【おはよう】
何から何までそうなるなら そうならそうで何をしようか
あなたがただ ここに生きてる
変わらないのか 変わり出すのか
変わり出すのか あなたの心理学(Psychology)

心理学/オリジナル・ラブ

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…先生は、ちょっと待ってくださいと手振りで言い、いったん自室に戻ると、粗悪な画仙紙で刷った小冊子を持ち出してきた。『中佛簡易単語対照辞典』。先生が開いてくれた頁をのぞくと、そこには時間に関する副詞がいくつか列挙してあり、驚いたことに、《以前》に対応する単語としてはたったひとつ、《AUPARAVANT》だけが記載されていたのである。紆余曲折を経てフランスに落ち着いた中国人共同体に流通しているらしいこの小冊子が、クイズ番組で堂々と笑い話にされる紋切り型の源だったのだろうか。ぺなぺなしたそのみすぼらしい本の、黄ばんだ頁を何度も確かめながら、な…[全文を見る]

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 その数日後、宿舎のテレビで、なにをしゃべっているのだか私の語学力では半分もわからないバラエティ番組を眺めていたときのことだった。わが国でいう連想ゲームのコーナーがあり、何番目かの問題でチームリーダーが、自信ありげにひとこと、意図的に母音を強調した甲高い声で、《おぱらばん》というヒントを出した。すると回答者が、間髪を入れず「中国人!」と叫んだのである。なるほどフランス人の誰もがあの口癖に気づいているのだなと感心する一方、アジアの同胞を小馬鹿にしたような出演者の表情二、嫌な思いを味わったものである。さらに何日かして、仕事帰りに廊下で先生に会ったとき、私はその無意識の差別とも呼ぶべき番組の話は伏せたままメモを取りだし、なぜあなたがたは過去の時間を喚起するとき、いつも同じ副詞を使われるのか、どこでフランス語を勉強されたのかと、たぶんそんな意味になる順序で漢字を並べて彼に見せた。…

id:dominique1228
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 彼はまず、こちらの国籍を確かめもせずに、以前、東京へ行ったことがある、とフランス語で言おうとした。言おうとした、としか書けないのは、《以前》に相当するフランス語を思い出すのに、彼がたっぷり10分以上の時間をついやしたからである。顔を真っ赤にして、声にならぬ声を漏らしながら熟考した末に出てきたのは、くだけた日常会話ではあまり使われない《AUPARAVANT》という単語であった。片仮名に変換すれば《オパラヴァン》と表記しうるこの副詞は、ふたつの行為の時間差をはっきり示すために用いられる、どちらかといえば丁寧な言葉で、私は宿舎に滞在している中…[全文を見る]

id:poolame
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「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」っていう勢いで「診察室に入ると、先生が『2ちゃんねる』を見ていた」って松尾スズキが書いてた(『実況生中年』より)。決断を迫られるシチュエーションだね。

id:molan
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 私の見る限りでは、残念ながらただ放送時間をつぶすだけのために制作しているとしか思えない番組が三分の一ぐらいはあるようだ。品のないタレントが、下品な仕ぐさで品のない無意味なおしゃべりをするだけの番組も多い。私ほどの年齢になれば、今さら大抵のことに驚きもしないし、下らないと思えばすぐにスイッチを切る程度の判断力はあるから、テレビが何を放送しようがほとんど影響を受けることはない。
 しかし、判断力の乏しい幼い子供なら、汚い言葉やわざとらしい下品な仕ぐさを見続けるだろうし、これが人間の普通の姿だと思い込むかもしれない。テレビのおかげで人間がますます下品になっている面も多そうだ。
 
(石川英輔 著「大江戸省エネ事情」より)

id:dominique1228
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佐野元春「SOMEDAY」@YouTubeに対するコメント。

10年ぐらい昔、TVの5分番組のインタビュー。
ファンからの質問 人生には嫌なこともたくさんありますよね。 佐野さんは、つらいことや悲しいことを歌にしませんね。 わざと避けているんですか?
佐野の答え そのとおり。 僕は、僕の歌をきいてくれるみんなを元気にしたいんだ。 だから、つらい歌は歌わない。 そして、僕は、これからもうそをつき続けるんだ。 みんなを元気にするために。
涙が止まらなかった。 10年も昔の、5分ぐらいの短い番組のインタビュー。 今も私の心に刺さったままだ。

涙が出てきて、止まらないです。 Upしてくれてありがとう! 当時、彼のコンサートチケットが手に入って、自殺をやめた子もい­るという逸話もあるぐらいでした。

id:dominique1228
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この文章全体(引用部分ではない)でいう「戦争」とは、ひとつの曲の中で各々の楽器がそれぞれのリズムを刻んでいるので、その状態を指します。アフリカ音楽に多いです。人によってはこれで踊るのかと訝ります。それが一般的であるとも思います。

id:dominique1228
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大好きな文章なので再掲。

こんなことは言うのもアホらしいが、愛と平和の名の下に実際の戦争に反対するとか、或いは逆に国家に対する誇りと自信を獲得しようという考えから実際の戦争に賛成するとか、そろそろ戦争が来るぞと平和ボケの大衆に警鐘を鳴らすとか、実際に起こっている世界のどこかの戦争を見てお前らはどう思うんだと問いただすとかいうつもりはさらさら無い。

 そういう人がいても全く構わないが、僕にとっては総て全くどうでもいい。というか、僕にとって戦争とはこうやって反対したり推進したりイデオロギーによってコントロール出来るものなどではなく…[全文を見る]

id:florentine
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「(略)布団にもぐりこんだ。別の子が、そこにいた。小さくて、細くて、とても冷たかった。暖かさを求めて別の子が体を擦り寄せてきたとき、自分はもう小さくない、とビンは思った。今のビンは、大きくて暖かい誰か、強くて、包容力があって、人を守ることのできる誰かなのだ。気分が浮き立つようなことだったが、身が引き締まるような思いもした」ジーン・ウルフ「風来」より
 
いっぱんに、たいへんに難解だと評される小説を書くジーン・ウルフではある。だがわたしは好きだ。大好きだ。彼の小説はどこをどうとっても「フェア」で、また非常に「マッチョ」ではあるけれども、『新しい太陽の書』のセヴェリアンのいくつかの告白といい、この描写といい、「本を読む孤独な少年」であった自身を惜しげもなくさらし、いまもまだそうであるとその「小説」が語っている点で、どうしてもどうやっても嫌いにはなれない。

id:quadratus
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「その時、私は自分が求めていた印が、人群の中で人にお辞儀をするような小さなことではないことを知って、神殿の幔が上から下まで避けたという、子供の頃に聞いた言葉を思い出した。」
イーヴリン・ウォー『ブライヅヘッド ふたたび』吉田健一訳

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「私にとってグルーヴというのは、外部から影響を受けずに瞑想するための空間のようなもの」
―ミシェル・ンデゲオチェロ ベースマガジン2005年4月号

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「芸術のコミュニケーションは、知性ばかりでなく、感性をもふくんでいますから、知識ばかりでなく感動もあたえ、人格の全部を動かします。その点で、あらゆる人間のコミュニケーションのなかで、もっとも複雑で、もっとも深く、もっとも総合的なものだといえるでしょう。そのうえ、たとえそこに描かれた思想や信仰が今は滅びてしまい、意味を失ってしまっているとしても、絵は残ります。絵の生命は死ぬことはなく、古びることもなく、それを人が見て美しいと思うかぎりつねに現在です。それこそが芸術のほんとうの力なのです」 若桑みどり『 イメージを読む―美術史入門 』…[全文を見る]

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 こういう夜は、ねぎを刻むことにしている。こまかく、こまかく、ほんとうにこまかく。そうすれば、いくら泣いても自分を見失わずにすむのだ。ねぎの色、ねぎの形、ねぎの匂い。指先にしんなりするねぎの肌の感触。ねぎを刻みながら、また涙がおしよせてくる。目の前が浅い緑色ににじむ。私は泣きながらねぎを刻む。ごはんのスイッチをいれてねぎを刻み、おみそしるを作ってねぎを刻み、おとうふを切ってまたねぎを刻む。一心不乱に、まるでお祈りか何かのように。誰かに叱られたら改心できるのだろうか。私は改心したいのだろうか。なにを、どんなふうに。
 小さな食卓を…[全文を見る]

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お父さんは 日常の絶え間ない努力によって
着ぐるみ的人格を 自ら形成しているんだよ
とっても大変なのだ
(Papa told me)

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「20世紀は二人の偉大なルネッサンス人を生み出した。アントナン・アルトーとジャン・ジュネである。」
http://www.gendaishicho.co.jp/news/n2555.html
 
連投。
嗚呼!
鈴木創士さんからこの言葉を聴けたら本望!
(じぶんでも舞い上がっててよくわけわからんですよ。素敵な言葉も頂戴したし、今日はとても好い日です☆)

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「ラブレー先生は、フローベールとはちがって『わたしが生きているかぎり、自著に挿絵は入れさせません。(中略)絵があると、観念がそこで閉じられてしまいますから」という証言を残してはいないので、挿絵も、少しだけ入れさせてもらった。」
ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル 1』宮下志朗訳 解説より
 
「ただし、底本とした」、「同時代のものだけに限定した」と続く。
わたしはたいそう意地が悪いので(そうでもないか。これがフツーだよね? ていうか、礼儀?)、渡辺一夫訳と並べて読んでるんですが、いや流石、宮下先生! モンテーニュの書棚にミ…[全文を見る]