お話しするにはログインしてください。

|

Tips:ルビ記法:[文字(もじ)]の様に書くと文字もじとふりがなになる。
id:marukomekid
超短編のことを語る

題名:エンドレスエイト

ですね、わかります。

id:Moriyama
超短編のことを語る

「なぞなぞだすよ♪ 頭から血を出して,恨めしそうにこっちを見てる,頭が七つ足が九本触手がついてる化け物なーんだ?」
「……ぜんっぜん分かんねーよ。答えは何だ?」
「さっきから君の後ろに立ってるよ」

id:marukomekid
超短編のことを語る

5ヶ月前以来一度もかけたことのない声。
たまたま鉢合わせたエレベーター、四角いボックスで全てが完結する。
ちらちら目が合う。
途切れ途切れに会話が始まる。
互いに気付いている。もちろん。
エレベーターは下がる。思いは上がっていく。
扉が開いた。
二人は手をつないで光の外へ。
扉は静かに閉まっていった。

id:ss-rain
超短編のことを語る

 ふちの欠けたほうのお皿に、薄めにきったロールケーキをのせる。湯気の立つマグに漬かったティーバッグを引き揚げ、リビングでリモコンをいじる友人に声をかけた。
「フォークいる?」
「いらなーい」
「マグ、ムーミンとカボチャの、どっちがいい?」
「何カボチャって」
「去年のハロウィンの時期にケーキ買ったらオマケでもらったやつ」
「ムーミン」
 ふちの欠けていないお皿とムーミンのマグを友人の前に置くと、彼女は律儀に両手を合せた。並んだ皿を見てぽつりと言う。
「自分のだけ薄く切ったでしょう」
「あたりまえ」
 コンビニのケーキは、夜のおやつとして…[全文を見る]

id:usaurara
超短編のことを語る


「緑の三角」

その頃、世界にはまだ色が少なくて小さな穴からあふれ出る色の洪水は、少女には夢のようでした。
 

 
畳の上でおはじきにしてひとしきり楽しんだ後、少女は筒を握り締めかしゃかしゃと鳴らしながら
ブロック塀の向こうに遊びにゆきました。「ぽんっ」「しゅーっ」「かしゃかしゃ」「ぽんっ」・・・・・・
繰り返すうち蓋を開ける「ぽんっ」が鳴らなくなったかな、と思うや、少女の手から七色の玉は飛び出して、
原っぱのそこここに噴水のような弧を描いて散らばっていきました。
夏草は少女にとって絶望的な高さで揺れていて、しばらく探してはみたものの数粒…[全文を見る]

id:usaurara
超短編のことを語る

 
『おおきな、まるい、宝石』
 
 

「アレクサンドリアという葡萄のような朝」と始まる歌の、このフレーズだけが好きだった。
どうも私は口が卑しい。
 
この、僅かに青みがかった黄緑への想いは四歳の記憶にさかのぼる。
まだ陽射しのきつい初秋、私は遠足で葡萄狩りに来ていた。
なぜ青い空と陽射しを覚えているかといえば、私が上ばっか見ていたからだ。
葡萄は幼稚園児の手の届かない上空に、夢のようにたくさん、のどかにぶら下がっていた。
 
 

幼なじみのナカガワマサオくんのお母さんが一房切って私に手渡し、
「まだ食べられるなら切ってあげるからね」と…[全文を見る]

id:usaurara
超短編のことを語る

全角スペースを一回押して、そのあと普通に改行・・・・・・です。
私も今日知りましたwww

id:usaurara
超短編のことを語る

「はじめての海」
 
 
お昼寝からさめたとき、母が「海へ行って見ようか」と言った。
お散歩でいつもは折り返す国道の向こう側に初めて渡ると、
そこには白く眩しいお砂場が左右にどこまでも続いていた。
きっと潮の匂いもしていたに違いないが、「ほら見てごらん」と母が言った瞬間も
わたしにはざわざわと濁った水音だけがあった。
しかし見えなかった青は、数秒遅れでわたしの視界を覆うや、
その乱暴で無節操な挙動でわたしを恐怖に陥れた。
 
母が着せたタオル地のワンピースは胸に赤いアプリケがあるお気に入りだったが
手を引かれ水打ち際までこわごわ行くと波が…[全文を見る]

id:ss-rain
超短編のことを語る

話しこんだまま、夜が明けた。
「春はあけぼの」
夜の果てまでゆきついた私たちは完全に疲弊していた。もう若くないのだ。
「春じゃないし」
それでも一応つっこんでくれる存在は、何とありがたいことか。
「寝る?」
「いや、意味はないよ。もはや」
互いに、焦点の合わない目を合わせる。
変な顔、と思ったが、笑う元気はなかった。
そして、おそらく向こうも同じことを思ったはずだった。

id:happysweet55
超短編のことを語る

すごく可愛いい超短篇だね!好きだなあ、これ!

id:say-01
超短編のことを語る

また美容院を予約してしまった。
先週切ったばかりなのに。カットだけお願いしますと、また電話してしまった。
 
もう、名前も覚えていない…というか、ハンドルネームでしか呼び合ったことなかったあの彼。
なんであの男はあんなこと言ったのかな。あれは確か出会い系オフではなかったはず。
「俺が伸ばしてって言ったら伸ばす?」と言われて私は「伸ばさない」と答えた。
 
そうだ。あの時から、私は髪を伸ばせないでいる。
なんて強力な呪詛だ。

id:zushonos
超短編のことを語る

梓と卓也は山中で道に迷ってしまう。日が暮れかけた頃、雰囲気たっぷりの、しかし手入れがされた古民家が、突然二人の目の前に現れた。
呼び鈴の類は見当たらない。玄関と思われる引き戸の外から「ごめんください」と呼びかけるが返事はない。二人は思い切って引き戸を開け、中に入る。暗い屋内に向かって再度「ごめんください」と呼びかけるが、やはり返事はない。
そのとき、後ろで音もなく扉が閉まった。障子なので、夕暮れの残照は屋内に入ってくるのだが、明らかにその光量が減ったのに気づき、二人は振り返った。
引き戸が勝手に閉まるなんてことがあるだろうか。
「・・・」
卓也は驚いて声も出ない。
梓にいたっては
「うわあ」
思わず声を上げてしまう。
「自動ドアだなんて、便利ねえ」

id:zushonos
超短編のことを語る

利用駅が始発の電車に乗った。しばらくすると、車内放送が始まった。
「この列車の運転士はカトウ」
ああ、俺と同姓だ。まあ、ありふれた苗字ではある。座席の半分が埋まっているが、もしかしたら俺のほかにも同じように思っている乗客がいるかもしれない。車内放送は続いた。
「車掌は、カトウ」
うわ、こっちも同姓だ。これはちょっと珍しい。しかし、『車掌"も"カトウ』と言えばいいのに。表記が違うのだろうか。あるいは同一人物が運転士と車掌を兼ねていると誤解されないようにという配慮か。待てよ、俺もカトウだから、最初から「運転士もカトウ、車掌もカ…[全文を見る]

id:say-01
超短編のことを語る

「俺って雨男なのよ」
雨男/雨女を自称する人って、自分一人の都合で自然現象がどうにかなるとでも思ってるのか。
病気自慢のようで、不幸自慢のようで、うんざりする。
 
そこで「私は晴れ女だよ」と返す。
 
彼が「だって大事なイベントのときは必ず雨なんだ、ホントに」と言うから。
そのセオリーを当てはめると、晴れた日の私とのデートは彼にとって大事なイベントではないってことになるではないか。
 
今年二人揃って花見のチャンスは恐らく今日が最後。
窓の外に見える空は朝から明るくなったり陰ったりを繰り返している。
彼の「雨男」パワーと私の「晴れ女」パワーと、勝つのはどちらだ。

id:zushonos
超短編のことを語る

同居人と飯を食いながら、ぼんやりとテレビをみていたら、当時世間にもてはやされていた水泳選手が、きらびやかな衣装をまとって画面に登場した。
「あいつはどうにも好かん」
私がつぶやいたのを聞いて、同居人が問いかけてきた。
「どうして」
正味のところ"生理的に受け付けない"風味の感情が出発点なのだが、それではあまりに芸がないと思い、理屈を付けてみた。
「ええとね、妙な靴を履いていたとか、なんたらいう銘柄の服を着ていたとか、そんなことで新聞に取り上げられるのが気持ち悪い。水泳の選手なら水泳で取り上げられるようにしろと思うんよ」
「ふ…[全文を見る]

id:ss-rain
超短編のことを語る

去り際を
心得ており
踏む桜

id:ss-rain
超短編のことを語る

悔しいのは、多分彼が私のためだと思っていることだ。
彼は多分正しいのだろう。だがそんなこと、知ったことか。
彼を置いて出てきたはずなのに、私が置いていかれたような気持ちになっている。

id:ss-rain
超短編のことを語る

「中にさ、4万円入ってたの。4万だよ!おろしたばっかでさ…」
「うん」
愚痴るのにラーメン屋を選ぶのは、明らかにまちがっていると思う。
「しかもさ!プラチナチケットまで一緒に入ってたんだよ!!あれ取るのにどれだけ苦労したことか……」
「そうかー」
私の丼はあと背脂の浮いたスープを残すのみだ。友人はずずず、と何口目かの麺をすすった。
「ねえ、それもう伸びて…」
「あああああああああ、むかつく!ほんと、どこのどいつだよ!今不幸にならなくても!情けがめぐりめぐるように、恨みもめぐりめぐってそいつに届くよ!今すぐ悪いことするわたし!」
「……うん」
私はできるだけ背脂をよけて、スープを飲んだ。ぬるくてしょっぱい。
「でさ、だから堂々と言うけど、今日おごってよね」
「………」

id:ss-rain
超短編のことを語る

「え、ミサキが来るの?」
「そうよ、だってあたしまだ夕飯作ってる最中だもん。嬉しいでしょ?」
「…ミサキ、いやがってなかった?」
「ばかね、いやがるに決まってるじゃない。がんばってね。お小遣いはあげちゃだめよ。じゃ、あたし揚げ物しなきゃいけないから切るわよ」
こちらの返事を待たず、電話は切れた。
予報よりも早く降り出した雨は、春も盛りだというのに、ひどく冷たかった。
しかし、ここ数ヶ月口も聞いてくれない娘が傘を持ってきてくれると聞けば、そんなものは最早気にならない。嬉しさ半分、戸惑い半分で、「ありがとう」のあとに何と言葉を続けたらいい…[全文を見る]

id:ss-rain
超短編のことを語る

姪は、猿に似ているのにかわいかった。
それはそれはかわいかった。
言葉が通じなくても、泣いても、怒っても、喚いても、かわいかった。
彼女の幸せを全霊で祈った。そして、信じた。

私もいつか両親や他の誰かに、あんな風に、無心に愛されたのだ。
なんで、姪の顔なんて思い出してしまったのだろう。
今、この瞬間に。
震える手から、カミソリが落ちた。
浅い傷に涙が沁みた。