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花うさぎのことを語る

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30. ふっかつのじゅもん

2011年の春。
大きな失意のなかで見た花。
そのとき実ったアーモンドを連載期間中デスクトップの傍らに置き、
他者に、自分に、失望し、投げ出したい気持ちになるたび眺めました。
木の実の中に入っていたのはこの文章です。

  • -------------------
  • 「欲望」そのものを操作しようとするひとたちにはその無謀に呆れますし、
    「悪」から目をそらし、ナイものにしてすませようとするひとたちは怠惰だと嘆きますし、
    自身や世界をキレイなものにしておきたいと願うひとの「弱さ」はわたしの身の内にもありますが…[全文を見る]

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29. 種子

「あなたはあなたのままでいてくれ」とか
「都会の絵の具に染まらずに帰ってこい」とか
昔は勝手な文句を歌っていたものだが、最近はさすがにこういったセリフを聞かない気がする。

中学三年生で付き合っていたひとが交換日記の最後にこう書いた。

「明るく素直なあなたのままで」

しかし残念ながらその後の高校生活、わたしは失恋をしてほとんど心の底から笑うことができなかった。「明るく素直なあなたのままで」は輝かしき標語となり、それでなくても息苦しい毎日にのしかかった。

そういった言葉はだいたいにおいて悪…[全文を見る]

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28. 零れ落ちる

尺が少なくなってきたのでそろそろこの物語全体を通してわたしが見ているものについてお話しようと思います。
そのまえにご承知いただきたいのは、これがコラボをしたusauraraの私見でありたくさんの見方のひとつに過ぎないということです。
物語に何を託したかということを作者にあらためて問うたことはありませんし、それはこれからもしないでしょうから。

なぜ「夢使い」がこんな能力をしか持たぬものとして登場させられるのかを考えなくては、作者が託したものは掬い取れないだろうとわたしは思います。そして…[全文を見る]

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27. ゲッタチャンス

アクセルを踏むのは常に茶髪君であるかに見える。でも、そこに至るまでには実は何度も黒髪君がアクセルを踏んでいるはずだ。意識的かどうかは別にして。

昨日、王子様のようにカッコイイうささんを印象付けてしまったので修正をしたい。
わたしはグダグダと泣きごとを言っているだけのひとが嫌いなので、このコラボを持ちかけたのは「救済」の類ではないと書いておく。(結果的にそうなったということはありえても、だ)
その当時、たしかに彼女ははてなハイクでグダグダと泣きごとをよく言っていた。しかしそのか…[全文を見る]

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26. 生成されるために

「一次~二次創作と作家性について詰めることなくコラボを始めてしまった」という失敗談を話したが、そんな無茶ができたのはそれに先立ち二年間「はてなハイク」という場の共有があったからだ。すでにお互いについて、かなりの確かさで了解ができていた。「実際の細かいことはたいして問題ではないでしょう。『あ、うん』でやっていきましょう」と彼女は言った。

嬉しかったが、実は「まいったな」とも思った。
この企画を持ちかけたときの彼女は長くやってきた仲間と意見を違えてケンカ別れし、自伝的恋愛小説に…[全文を見る]

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25. ドラマティック

付き合っていたころの彼は世の男性並には写真に熱中しており、重いフィルムカメラを毎度デートに提げてきた。そうして数年間、レンズに微笑みかける女の子の写真を量産したあとパタリと止めた。結婚したのだ。

つくづく思うことがある。「なぜ結婚したら男は妻の写真を撮らないのか」ではなく。
誰もがほぼ同じ位置に二つの目を持ち、同じ場所に居ながらも、観ているものがまるで違っているということ。カメラで視界を切り取った集積を眺めていると、そんな当たり前のことがあらためて意識されるものだなと。
いわ…[全文を見る]

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24. 強いもの、弱いもの

コラボの一年半近くを我々は認識のズレに気づかず過ごした。気づいたのは、たまたま印刷屋のセールの話が舞い込んだときだ。「本、作ろうか」

第二部まででもすでにテキストは薄い本として十分にあった。コラボ当初からオフライン活動をしない方針の私は「絵を寄稿するだけなら」と協力を快諾したが、イラストの内容を話し合ううち互いの「ズレ」に気づく。
唖然としたw

一般的なことはわからないが小説のコミック化という場合、テキスト作品の色彩を最大限生かしながらビジュアル化するのが「スジ」だろうと…[全文を見る]

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23. トランペットと波の音

長い連載期間だったので失敗はいくつもある。

第一部で集客の手として「朗読」を取り入れたのだが、特に何の問題も感じなかったため「続けよう」と合意した。だが、連載が進むにつれこれが失敗だったと気づく。

朗読とテキストの併載ということは、その文章が朗読の「音」だけで十分に意味が通じなければならない。特殊な文字使いで文章に余韻を与えることができない。また、音で聞かせる場合「時間のまとまり」についても敏感でななければならない。何話にもわたって「ひきずる」ことができないのだ。さら…[全文を見る]

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22. 泥棒猫

作り話なんだから主人公である黒髪君が恋人である茶髪君の窮地を救ったり、さらにはふたりで地球の窮地を救ったりしてもいいのに黒髪君は第一部からすでにとろ臭く、第二部では正念場であたふた逃げ出してしまい、押しかけられて押し倒されてあげく居すわられてダメダメだw

一応言っておくけど、キャラクターについてわたしが希望を伝えたことは一度もない。
ただ、コラボに先立つメールで「いつかオスカーの分身を描いて幸せにしてあげたいなあなんてずっと思い続けてるんですよw」と昔話に交えて伝えたことはある。
「…[全文を見る]

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なお、「夢のように、おりてくるもの」本編のクランチマガジン掲載ページは2014年9月末日現在で 39,648 ビューに達しております。☆4万ビューは目前だ☆
ここ、はてなハイクで見守り育てて下さった多くの方々を含むたくさんの方々の応援に感謝申し上げます。

クランチマガジン掲載ページ https://i.crunchers.jp/data/work/393

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21. てふ

蝶は日本中から飛んでくる。
この時代に、蜜の在り処まではひとっとびだ。
ある種の花をある種の蝶が好み、別の種の花を別の種の蝶が好む。
花の咲く場所がどこであろうと蝶には関係がない。
花の名前も格付けも知ったことではない。

ところで以前知ったのだが、花をより美しく進化させたいわゆる「園芸種」の花は蝶に人気がないらしい。
そういう花は蜜の分泌機能が低下しているのだという。

たっぷりと滋味のある蜜が吸いたくて蝶は飛んでくる。
ここでこれを書く私自身が、その群れの一匹だ。
飛び立ちたい、今すぐ。(訳:腹減ったw)

おかげさまで「夢のように、おりてくるもの」本編の閲覧数が20000ビューを超えました。
このエッセイの閲覧への感謝とともに、皆様に御礼申し上げます。

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20. 北へ

フィンランドのロードムービーを観た。南のヘルシンキから600キロ、凍てつく景色を北へと走る。
その映画のなかで、寝床にはいった孫娘に老人が話を聞かせるシーンがあった。極限に追い詰められたものが出遭う小さな幸福。
実際にあの国で今も語られるものか、忘れられた古いものか、映画のオリジナルか、そもそも設定として「老人の即興」とされているのかはっきりしないが、あの自然に暮らす人々にふさわしい厳しく美しい寓話だった。

こう書いたら暗い映画と思われてしまうが、筋もキャラクターもほどよくハチャメチャで終…[全文を見る]

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19. 紅い芍薬 闇に蛍

兄を亡くした季節が初夏だったせいか、黒髪君の「喪失」もそのころのような気がした。

制服のジャケットは、クリーニングに出そうと部屋の端に吊り下げられていただろう。
カッターシャツは洗いあがっている。
洗ったひとはもうここにいない。

彼は鏡をみている。
その向こうをみている。

さて、衣替えのシーズンだ。
ものを右から左へ動かしただけでもひとはときめいてしまうらしい。
高血圧のわたしは用心せねばならない。

同様に、お嬢さんがたは夏に用心せねばならないらしい。
夏は恋の季節で、恋は人生が片付くときめきの魔法となることもあるから。

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18. おおきなにもつ

先日愛さんから茶髪君について耳打ちされた。
それはとてもおおきなものなのだと。

「そ、そうだったんですか。それは存じませんでした。今後はしっかりとその点に留意して描かせていただきます!」

人と人が出会うとき必ずそれぞれに荷物を背負っていて、ゼロから始めることなんかできない。
そういう話を、この連載当初彼女としたなと思い出している。
出遭いというものを、ゼロから始められたならどんなに楽だろう・・・・・・。

あの頃彼女は「どうしても、どうしても、恋愛が書きたいのだ」と言った。
「なのに、お前には書けないと言われた」と嘆いた。

マイナスからの出発でも、ひとは歩かないわけにはいかない。
何度でも、歩き始める。

さて、冒頭の耳打ちについてだが、正確に言うと「にもつ」の話ではない。
2ではなく1である。

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17. 楽園

水底から手を伸ばし
その掌にちからを蓄え
花を咲かせる睡蓮をガラス越しに眺めるのは

守れなかった罪に

さらにその忘却を赦しそうになる罪に
身を浸すためだ

楽園のように光あふれるバスタブの
水は悔恨に満ちている

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16. 休眠と覚醒

「目覚め」には光と温度と時間が関係する。

彼は最上階にある施設の研究員であり花守でもある。
毎年水ぬるむころには研究と関係のない観賞用スイレンの目覚めが気になるのだ。

クリスマスのコミックは当初「クリスマスもので二人の距離がちょっと近づくお話」をやろうということだった。でもそれだけではあまりに小さい。ただ甘酸っぱいだけの小咄になる。もっと掘り下げて描きたいと欲が出た。
二人の関係が成立する直前に、茶髪君がその準備をする工程を組み入れてはどうだろう・・・・・・。

まず「ラスボス、どう?…[全文を見る]

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15. みぎ、ひだり、みぎ、ひだり

リアルという言葉をよく使うようになったとき、それはバーチャルと対立させたものだった。
2014年の今、それらは自転車のペダルのようにクルクルと追いかけあいながら時代を前へと運んでゆく。

第二部タイトルにあるように車輪のイメージもこの物語のモチーフだ。
いくつものギアがそれぞれの回転をしており、それがより大きな運動をつくる世界。しらずしらずにひとは隣り合ったギアを廻している。

相棒のペダルはとてもゆっくり進む。
ローギアで。
それは何かを得るためには都合の悪いことかも知れないが、けっして悪いことではない。

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14. 燃え立つ

今日は躑躅(つつじ)を見に出かけたのに、今年は花付きが悪くてちょっと残念でした。(この写真は去年のもの)

さて、店長の娘は店長の娘なので勿体ぶったことが嫌いです。活発です。毛深さと情の篤さを引き継いでいます。きっと赤がよく似合う。

小説と違って挿絵やコミックを描くとなるとキャラクターに服を着せなきゃならない。時代設定、性格、社会的地位等を考えあわせて読者に「ありそう」と感じてもらわないといけない。なかなかめんどくさいです。(わたしはファッション好きなので苦にはなりませんが)

私は…[全文を見る]

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13. HAPPY BIRTHDAY!

あかりはずいぶん前に落とされている。壁づたいに反射してくるオレンジいろの光がほのかにのど骨や顎の輪郭を描く。ボタンを手早く3つ外して少し手をとめる・・・。

・・・といったかんじで、今日掲載ぶん(https://i.crunchers.jp/data/content/393/12562)のワンシーンを描いてみた。

コラボ発足時「新しいことを考えすぎないで実践してみよう、性表現についてもお互いにこれまでより一歩踏み込もう」と約束したものの、連載場所はいわゆるオタク向けではなく中高生が混じる一般的なSNS。小説と違い伝達性の高い「絵…[全文を見る]

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12. 花の散る音

小さいころから聴こえぬ耳をひとつ持っている。面倒で、そんなお飾りはないほうがマシとさえ思ったものだ。

が、聴こえすぎる耳というのもきっとつらい。拾いたくないノイズを拾う日が続けば、そのひとは侵入を防ぐために心に壁を積み始めるだろう。「うじうじくん」と読者からネーミングされる彼=黒髪君は、他者との接触に少しの困難が生じる運命をはじめから負っている。

他者から「ぼんやり」にも見えるその佇まいは、彼だけのものではなく彼ら共通のものではなかろうか。
それは、何も起こらぬ日などありはしないのに「今日もいい一日だった」とひとが日々を送るのと同じ安穏さで彼らが日々を送るための「手立て」なのではなかろうか。